沼に沈む女


「本当にここで泳ぐのか?」
今私は沼の上に船をこぎだしてもらっている。沼というのは、近所にある小さな池で、水草が大量に浮き、ひどい腐敗臭を放っていて、何かの死骸が沈んでいてもおかしくないような汚い池だ。汚い、臭いという響きに私は非常に興奮を覚える。牛乳臭い雑巾まみれとか、糞尿にまみれて汚いとか、それを聞く度に体が疼き出す。
まっさらの白の長袖セーラー服で、雪の降り出しそうな寒空に、汚く冷たい沼に放り込まれる。汚い緑色に染まる私を想像するともう我慢できない!
「もちろん!突き落として!」
私は突き落とされた。ヌメヌメと肌をくすぐりながらも、針のようにささる冷たい水。頭から落ちたから、全身染まっているはずだ。ボートは離れていく。私はその冷たい水の中を泳ぐ。時々潜ってあがると、水草や藻が髪に絡みついて、私はたぶん端から見たら魔物か何かみたいじゃないかなぁ。
岸までついた。水面からあがると寒い。旦那はタオルとカメラを用意して待っていてくれた。一度全身が真緑に染まった姿をなめて撮ってもらうと、またすぐに沼に飛び込んだ。風が冷たくて、水の中にいた方が温かいのだ。またヌメヌメの水に染まる。自分の体が汚い水の中にある興奮。旦那に水草を投げつけてもらう。顔に当たる。頭に乗る、振り払ってもまた投げつけられる。潜ったあともう一度あがる。寒い。寒い。深緑色に染まったセーラー服はひどい匂いだ。
旦那にしっかりこの姿を撮ってもらい、歩いて10分でずぶ濡れヌルヌルの可愛い私はおうちに帰る。鏡で自分の姿を見たら、なにこれ。怪物?冷たく濡れて寒いはずなのに、体の中から火照ってくるこの興奮。もうサイコー。
でも、寒さは容赦しない。しばらく緑まみれに興じたら、服を脱いで風呂に入らなきゃね・・・・



 

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