Because of Phantom

二週間前、明香里の通夜が行われた。自転車で事故を起こしたらしい。
私の、唯一の友達とも言える明香里は、私を置いて先に逝ってしまった。
二週間経っても、まだ辛い。自転車には乗らなくなった。喋る相手も消え、なにより淋しかった。
今でもまだ明香里は生きていて、私を驚かそうと隠れているんだ、なんて思ったりする。いや……思うしかなかった。
ある日のこと。
いつも通り学校で授業を受けていた時、突然私の消しゴムが消えた。
辺りを探しても見つからないので、休み時間に探そうと、消しゴム探しを諦めると、どこからともなく消しゴムが飛んできて、私の額に当たる。
「誰……?」
まったく意味がわからない。
「えー、ここの式に代入して不等式が――」
今日もいつも通り授業があり、消しゴムが消えては私に飛んでくる。
誰がやってるの?
そのまま月日は流れ、文化祭に近づいていく。
今日、私は学校にいる間ずっと立て看板の制作をするので授業を受けなくても良い。
なんて良い日だろう。そういえば、星座占い一位だったっけ。
何人かと共に刷毛を動かしペンキを塗っていく。
絵を書くのは好きだし、今日は何も悪いことがない。最高の日ね。
そんなことを思っていると――。
「きゃああ!」
私の背中にペンキがぶちまけられた。呆然として左右を見ると、同じく呆然としている立て看板制作チーム。私を含めて三人。
…………。
「えっ……誰……?」
苦笑いの問いに応える人は誰も居ず、ただ私の体操服から赤いペンキが滴り落ちていた。
やっぱり……なんか私呪われてるのかな。こういうのって誰に頼めばいいんだっけ。寺? 陰陽師?
少し怒り気味に歩く帰り道。
同じ現象はここでも起きた。後ろから押されて、前方へダイブ。
前方には、水田。
今度こそ捕まえてやろうと、無作為に空間を掴んで共に倒れこんだ。
「いった〜い。まったく幽霊までも道連れにするなんて」
それは頭を押さえながら立ち上がった。着ている制服は私と同じくドロドロになってしまっている。
「え? 明香里?」
その幽霊の正体は明香里だった。制服をちゃんと着ていて、別に幽霊という感じはないが、たしかに存在感は薄かった。
「久しぶりだね。美帆」
明香里は微笑んだ。久しぶりの再開に私たちは抱擁し合った。
「でも楽しかったな。美帆が汚れる姿が見られて」
「ま、まさか……あれはもしかして明香里が?」
私の拳に力が入る。
「もちろん!……きゃあ!」
明香里の顔面に、私が投げた泥が直撃した。
「な、何するのよ!」
明香里は顔に付いた泥を払い落としながら言う。
「あれのせいで今までどれだけ苦しんでたか分かる?」
「さあね〜」
再び明香里の顔面に泥が直撃した。
「たっぷりお返しをさせてもらうわ!」
私はスクールバックに入った二丁の銃を構え、明香里の制服に射つ。
銃から射ちだされたオレンジ色の鮮やかなペイントボールは明香里の制服を汚していく。
「ちょ、ちょっと勘弁してよ〜」
「まだまだ〜!弾はいくらでもあるんだから!私に土下座するまで止めないからね!」
「いくらなんでもそれはないでしょ〜。きゃあ!」
また明香里の制服がペイントボールで汚れた。
二人の戦いは続く。
今もどこかで。

戻る



inserted by FC2 system