モデル体験記 (0)


結局、私がしてきたことは一体何だったんだろう。
切り捨てられるのは、コネ入社の新人やさぼりの多い男性社員ではない。かならず真面目な女性社員だ。
必死で会社に尽くしてきたのは何だったのか。
新人のミスの大量発注の処理を的確にしてきたのも、今動いているプロジェクトの原案を作り、かつ契約をとったのも、私をつな

ぎ止めるものではなかった。
復讐?馬鹿馬鹿しい。今更いちOLがどれだけ動いても会社組織にかなうわけがない。

私は、新しい道を進み始める。
なーんて、まだ完全にノープランの私が言える事じゃないか・・・これからどうしよう


あ、
「雨・・・」
冷たい雨はゆっくりと、しかし激しくなった。周りでは雨宿りに走るひとがバタバタと駆け足していた。私は淡々と歩いていた。

だって、もう濡らしたってかまわないもの。

力なく歩いていると、いつの間にか公園を歩いていた。それも、大きな森林公園。

懐かしい香りがした。田舎(とはいっても埼玉だけど)で嗅いだあの匂い
濡れた木々の優しく甘い香り。
近くのベンチに座る。ベチャッと冷たい水がお尻を濡らすけど、すでに下着までぐしょぐしょなんだから、気にしない
目を閉じて、雨の香りを楽しむ。土の匂い、草の匂い、すべてが懐かしい。
東京にも、あったんだ・・・

しばらくして、私は服に目をやった
濡れたシャツがぴったりと張り付いている。天然のシャワーでクセ毛で毎朝なやむ髪もしっとりとストレートになった。
猫が足下を横切った。猫もずぶぬれ。なぜか私にすり寄ってきた。仲間・・・なのかな。ひとりぼっちの。

そうだ。
私は自由だ。

今なら、すがりつくものもない。
駆け抜けられる。
羽根休めにも降りられる・・・

このずぶ濡れの感覚・・・
言葉で言い表せない愉しさがあった。
なぜ?なぜ「気持ちいい」の・・・?

そして、私はOLから全くかけ離れた仕事をする事に決めた。


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